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子どもに読ませたくないPTA推薦図書

「家庭用殺虫剤のひみつ」
学研から出ている「まんがでよくわかるシリーズ 18」である。
子供の頃学研のひみつシリーズで知識に対する偏愛を培っていただいた思い出のある私は、これもその類書であろうとわくわくして手にとってみた。
良書であれば子どもに読ませよう、と思ったのである。

吃驚した。

金鳥の提灯本である。

家庭用殺虫剤をテーマに掲げるのなら、様々な切り口でのトピック紹介が可能であろうと考えていた。子どもの頃に読んだような、単純な知識を親しみやすい漫画に書き起こした、そういう類を期待していた。
が、この本の切り口はおそろしいほどに一面的である。
蚊や蝿そのほかの害虫は単純なる悪であり、その生物が生態系で占める位置や役割についてはほとんどふれられていない。
また、この本のベースになっている会社は金鳥(正確には大日本除虫菊株式会社)ただ一社である。金鳥は業界第一位だ。頼りになるし話も早かろう。が、客観性、公平性、視点の多様性などの観点からすると、素人目にも非常にまずい。何しろ取材元を一社に拠っているのなら、その会社を批判することなど書けるわけがないからだ。
どころか客観的なまめ知識だけを掲載するものと思っていた柱部分には
「ゴキブリ用エアゾールの「水性コックローチJ」は、ピレスロイドの即効性と残効性が効果的に働いている」
「衣類の防虫剤ゴンは、熱を加えないでも効き目を発揮するピレスロイドを使用」
「玄関先におくだけで、虫をよせつけず、さわやかな香りがする「虫よけグリーン」という虫除け剤がある」
などなど。

商品名むき出しですが。

簡単にあらすじを紹介すると、
主人公は光男君という小学生。キャンプに来て富士の風穴に落っこちた彼は、あやしい蚊柱におそわれかけたところで未来少年に助けられる。その未来少年こそ何を書くそう光男君の孫にして未来世界を脅かす蚊を退治しようと奮闘するKazuだったのである。未来世界においては突然変異で異常進化を遂げた蚊が悪質な感染症を媒介し人類の生存も危うくなっている。そして異常進化の分岐点が啓介のいる時代であることを突き止めたKazuは、啓介の友人の光男の父の勤める金鳥で除虫菊を貰ったり、また殺虫成分ピレスロイドの構造を教えてもらったりして未来の蚊の根絶に努める。が、最終的には啓介が最初に落ちた風穴の中に潜んでいた人間をとても憎んでいるのになぜか人間型の蚊の雄怪人がひそかに開発していた蚊の雌怪人マザーメリスを体当たりで退治して未来世界は救われたのであった。なお啓介君が将来蚊の研究をして蚊の退治方法や異常進化の分岐点についての著書「モスキート伝説」を残し、それが未来の蚊についての対策のもとになったらしい。
マザーメリスがいなくなったんならそもそもKazuと啓介のこの物語はなりたたないじゃん、という時間旅行上の矛盾は置いておいて。

このストーリーの過程でトピックとして取り上げられるのは、害虫の媒介する感染症他の恐ろしさ、個々の害虫の生態、衛生上の問題、金鳥の社史、金鳥の殺虫剤研究内容である。
金鳥の社史。

もしこの本が最初から「金鳥と家庭用殺虫剤の歴史」というタイトルならいい。或いは金鳥工場の見学記念のおみやげならいい。どんどん自社をアピールしていただきたい。
だが、こういう一社礼賛の本が、あたかも客観且つ公平な本のような顔で、図書館に並んでいるのはどうなのか。
殺虫剤を語るなら、たとえば戦後のDDTの問題についても語るべきではないのか。殺虫剤とそれに対する耐性による終わりのないマラソン、環境に対する深く消しがたい影響、内分泌かく乱物質としての問題、化学物質過敏症、皮膚に対する影響、ハーブなどを用いた環境と体に優しい虫除け、天敵の活用性、そして、最初にも述べたが人間にとっての害虫が生態系においてどのような役割を果たしているのか、進化史上どのような位置を占めているのか、それらについても客観的に語るべきではないのか。
更には、現在問題になっている遺伝子組み換えが殺虫剤の会社(モンサント)によって開発されていること、殺虫剤耐性を持つ作物が環境に対して持っている問題、遺伝子組み換え作物の普及が世界の農民に対しどんな影響を及ぼしうるか(種子の独占の危険があるといわれている)、モンサントがベトナム戦争の枯葉剤を作った会社であること、など、殺虫剤のいわば「黒歴史」は、モノがモノだけにいくらでもある。
その全てを子供向けの本に書けなどとはいわないが。

自分が読んだひみつシリーズはこんなんじゃなかった。一社の提灯本を平気で出したりはしていなかった。たとえあとがき部分で「トップ企業や子どもが感心を持っている現代社会のテーマ」を扱っていると書いていたとしても、また冒頭で「この本は、取材、写真、資料提供など、大日本除虫菊株式会社の協力で作られました」と書いてあったとしても、そして表紙に金鳥のキンチョールの写真が載せてあったとしても、子どもにはそんな大人の事情はわからない。そこに書いてあるのは客観的な知識であると信じるであろう。
そこが困る。そこがイヤだ。

まあ、そんなわけで、とても子どもには読ませられないと判断した次第である。考えが偏るわ。

あとがきによれば。
このシリーズ、小学校と公立図書館には無料配布されているようである。
…読むなというぞ、私は。
著者の人は一生懸命書いたのだろう。こんなに批判してしまってほんとうに申し訳ない。それでも企画がダメだといわざるをえない。金鳥だけが悪いわけでもない。世界で未だに昆虫に媒介される感染症が蔓延していることは知っている。それに対する金鳥の功績もある程度理解しているつもりだ。
だがこういう、子どもに読ませようという本で、一社のみに拠るのは余りにもおかしい。
何故こんな企画を通したのか。

これが学研か。
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18歳君へ

このような枯れ果てたブログにコメントくださいまして、まずは大変ありがとうございます。
18歳でおられるとのこと、おそらく愛すべき初代「ひみつシリーズ」をお読みになったことはないのでしょう。
残念ですが、今のひみつシリーズはどれを見ても一企業の提灯本と言わざるをえません。
あなたほどの鋭い感性をもっている方なら、編集さんあるいはライターさんが書いた記事と企業の広報による自社また自社製品PR記事との違いはおわかりだと思いますが、それほどの違いです。
「キンチョーの歴史」であればよかったのです。
ただ、一事業の社史を、「家庭用殺虫剤の歴史」とまで一般化するのは少し浅薄にすぎる。
そうは思いませんか。

家庭用殺虫剤の日本のナンバーワン企業がキンチョーであることには異論はありません。
歴史もあります。
ただ、以前のひみつシリーズはもっと広範にカテゴリを紹介していたのです。
企業の影などなく、一冊の図鑑に比肩するほどの素晴らしいものでした。

なお、「子どもが読んでいたのを取り上げた図書」のではなく、あくまで「子どもに読ませたくない図書」としたその差分についてはご理解いただいておりますでしょうか。
読ませたくないというのはあくまで私見です。うちでは焚書は行っておりません。逆に怒った子どもにジョジョリオンを焼き討ちにされて泣いたことはございますが。
当方で唯一取り上げた図書は
「いぬみみずかん」(当方所有の1〇禁エ〇漫画、めっちゃおすすめ)
のみです。

(紹介拙記事
http://nekohann.blog1.fc2.com/blog-entry-1863.html

エ〇漫画くらい自分で買いなさいyo! yo! meeeen!

では、あなたの輝かしい未来に向けて、18歳さん、がんばってください。

※FC2に言論統制されたので当該レスは一部伏字にさせていただいております。

ネコタ斑猫 拝

もう少し子供を信じてください

たまたま拝見いたしました。
こちらの記事を読み悲しくなりました。

子供に読ませたくない図書ですか。
あなた様がそのように思われるのは自由です。
ですが、子供に読ませたくない。これは大人のエゴです
本を手にするのは子供です。好奇心は何者にも邪魔されるべきではありません。
偶然巡り会えた本で子供は何かを得ます。
そのチャンスをあなた自身の価値観で奪ってしまってよいのでしょうか。

私は小さい頃学級文庫にあったこの本を手にとりました。ストーリーがこわいながらも引き込まれて読んだものです。そして、身の回りにある製品がいろんな人の努力の賜物であることを知りました。
あなたは子供にも自我があり思考することを忘れています。大人がレールをしかなくても子供は自分で考え進んでいきます。
最近の行きすぎた規制は、子供の事を分かっていない大人達の暴走なのだと、改めて認識したところです。
あなたが考えてるほど、子供は馬鹿ではありませんよ。常に考え探求しているのです。
もう少し子供を信じて下さい。


生意気を承知で申し上げました。
長文失礼しました。

是非お読みになってください

あくまでもこれは私見です。
自分はわりと生物学や生態学がすきなもので、マニアックな平等性を求めすぎている嫌いがあると自認しております。
ほかの方でも同じような印象を持つものなのか、むしろ知りたく思っております。
私は辛口すぎますでしょうか。

いずれにせよ、子どもに読ませる本の中身は、きちんとチェックしたほうが得策だと今回思いました。

ネコタ斑猫 拝

はじめまして

学校に新しく配布された本で子どもにも人気がありそうだったので
校内への紹介文を書こうとしていました。
本が手元にないので
検索していたら、ひっかかりました。
自分でよく読まないで紹介文を書こうとしていた
自分がはずかしいです。

しかしこんな本を学校図書に入れていいのでしょうか?
学校司書の先生に今度聞いてみようと思います。
プロフィール

ネコタ斑猫

  • Author:ネコタ斑猫
  • オリジナル百物語サイトバー理科室の管理人。本家サイトでは400字×20枚内読み切り短編連載中。死ぬまでに千物語を完成させるのが目標。
    プロフ画像は山田芳裕著「へうげもの」より。古織いいよ古織。
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