東京国立博物館平成館で開催中の「特別展古代ギリシャ」に挑む際のいくつかのTips

6月21日から9月19日という結構な長期開催となる特別展古代ギリシャ。
紀元前7000年頃から紀元後500年頃までの古代ギリシャの作品なんと325点を詰め込みまくった濃密にして壮大なる展覧会である。
迂闊に挑むとマジで怪我をしかねない案件なので、挑む際のTipsを紹介しておこうと思う。

最大の注意点としては
十分な鑑賞時間を確保する
これに尽きる。何しろドラクマ硬貨からアフロディテを表したモザイク画まで小さいもの大きいもの取り交ぜて325点もの展示物があるのだ。それほど混んでいない状況(具体的には、新しい展示ケースの観覧列に二人ほどしか滞留していない状態)であっても全ての作品の鑑賞には1時間半はかかる。熱心に見たい、または何巡かしたいと考えるなら当然それ以上の時間が必要だ。間違っても「閉館30分前までは入場可」を鵜呑みにせず、鑑賞のみで少なくとも1時間半は確保することをおすすめしたい。入場券を入手し損ねた、グッズを念入りにチェックしたいなどのオプションがあるなら当然その分の時間も必要になる。注意されたし。

そしてもう一つ、まるで遺言のように、この特別展古代ギリシャに挑む人に伝えておきたいことがある。

キオス・マスティハ・ティアーズだけは買うな。好奇心から買うにせよ一個だけにしておけ。

特別展古代ギリシャということで、ギリシャ特産の商品も物販にあるのだが、キオス・マスティハ・ティアーズについての「地中海で古代から食べられてきたマスティハという木の樹液から作られた天然のガム。ヒノキの香りがします」などというなんだかロハスな魅惑の文句に騙されてはいけない。
あれはトイレの芳香剤である。
プラスティックのビーズである。
地中海の人はなれているから平気なのかも知らんが、日本人の舌はあれを食品と認識できない。
「1グラム、1時間ほどを目安に噛んでください」とのことだったが、どうやっても「プラスティックのビーズを噛んでいる」或いは「トイレの芳香剤を噛んでいる」という強迫観念から抜けられず、3分ほどで吐き出すはめになった。
実は職場に「特別展古代ギリシャのお土産です」と配ろうかと思って二袋買ったのだが、とんだテロをやらかすとこだった。
サルミアッキより強力な「食べ物と認識できない食べ物」をいただいたのは初めてである。

というわけで、如何に異国情緒を楽しみたくとも、結局誰にも分けられず自分一人で始末する羽目になるので、購入は一袋にしておくことをお勧めする。
ちなみに1袋10gで715円である。
立派なお値段だ。

とまぁ
流れの商人にえらいもんつかまされたご先祖様の遺言
みたいなことをもりもり書いてしまったわけだが、それ以外については大した文句はない。
(ギリシャーペンとか湯かげんエーゲーとか、なんでこの企画通しちゃったかなという商品はあったが好きな人もいるだろうから否定はしない)。

あとは美術展に挑む際の一般的なTipsと、本展覧会の見どころを紹介しておしまいにしようと思う。

1 入場券は事前に入手する
→タイムロスを防ぐため。案外チケットショップで割安で売っているのでそれを購入するのも一つの手である。
2 サイトを事前にチェック、展覧会の趣旨など目を通しておく
→会場でテーマごとの解説などを立ち止まって読んでいる人がいるがあれは大概サイトに掲載されている。会場では説明ではなく作品に集中したい。
3 関連資料やコピー用紙などを挟んだボードを準備する
→メモはしたくなるものだ。
4 入場したら、まずは物販でグッズを購入する
→閉館間際になると物販のレジは異常に混雑する。学芸員さんに残業やハードワークを強いたくなければ、知性ある行動をしよう。あなたがブルジョアならここでカタログを確保しておき携帯しながら作品を見るという贅沢も可能だ。
5 グッズを購入したら、それともども持ち物をロッカーに納め、極力身軽になる。
→鞄を下げて展覧会を見るというのは、体力を消耗し、嵩で周りの人に迷惑をかけるという愚かしい行為である。控えたい。
6 出品目録を入手する
→見当たらなければ学芸員さんに尋ねよう。
7 鉛筆を入手する
→展覧会では鉛筆以外は使用禁止である。学芸員さんに尋ねると快く貸してくれるので思い切り利用しよう。
8 堪能する
→このとき活躍するのがコピー用紙である。出品目録はどういうわけだか展示順に並んでいない。おまけにただのリストなので当然のことながらメモスペースはない。コピー用紙に作品番号とその作品を思い出すための自分なりのメモを残し、あとで出品目録と照合するのが比較的効率的な方法である。もちろんブルジョアにはこんな小細工は必要ないが。
9 閉館20分くらい前になったら最初の展示に戻りもう一巡する
→このころにはすでに人気がなくなっているため、豪勢な展示物を独り占めするという悦楽を味わうことができる。もちろん作品群を素早く俯瞰的におさらいすることで位置情報と共に作品の記憶を強化するという効用もある。
10 込み合う物販をしり目にとっとと帰る

とまぁこんな感じになる。

最後に、今回の展覧会における見どころについても紹介しておこう。

まず特筆したいのは
男尻
である。
ギリシャでは女性の裸体表現は長く禁じられていたらしく、皆薄物の奥に隠れてしまっている。そのように、女性の裸体表現を禁止されたことへの怒りがぶつけられたかのごとく、男尻の出来は猛烈に素晴らしい。正面から見たら仏像みたいにアルカイックなクーロス像も背中腰尻がなまめかしい。競技者像もポセイドン像もとにかく尻である。この展覧会に来たら、まずは「古代ギリシャ彫像の男尻を鑑賞する」ことを目して欲しい。同時に、ポストカード企画担当にはなぜ男性彫像の尻を撮影しなかったのかと強く抗議したい。湯加減エーゲーなんざよりギリシャ彫像バック攻めセットを出せばより売り上げが見込めただろうに! なぜ英断してくれなかったのだ!
なお、女性の裸体表現規制が緩くなった紀元前2世紀後半のニンフ像の尻はやはり肉体美にこだわりのある古代ギリシャらしい素晴らしすぎる造形であった。やればできる子なのだ、ギリシャは。

次に
金細工のすばらしさ
を強く推したい。
硬貨、装飾品類、エロスを表したディアデマ、ギンバイカの金冠はもちろんだが、特筆すべきはピラミッド型ペンダントと小型アンフォラ型ネックレスである。金の粒がみっしりとつけてあり、製法がさっぱりわからん。識者にご教授願いたい。

最後に、
アンティノウスとポリュデウキオンの美形っぷり
を推奨したい。
アンティノウスは例のハドリアヌスの愛人であり、その夭折を嘆いたハドリアヌスが職人に大量の彫像を作らせ、それを知ったルシウスがその過度な未練に流石にドン引きしたというナイスなエピソードの持ち主であるが、実物を見るとぱねぇことがわかる。
なんかでかいんですよ。スケール感として。
あれは是非実物を見てほしい。そして、皇帝に愛されるということはどういうことかを確かめてほしい。

というわけで、時間のない方はテルマエ・ロマエとヒストリエあたりを読んで予習しとくと「ほほう、これがドラクマか」「ほう、これがストレンギスか」「おお、そういえばこんな杯で酒を飲んでいたなぁ」などと楽しめること請け合いである。

以上、偏向だらけの「特別展古代ギリシャ」のご紹介であった。 皆様にも是非足を運んでいただきたい。屹度お楽しみいただけることだろう。

写真は多分ここが一番豊富
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    プロフ画像は山田芳裕著「へうげもの」より。古織いいよ古織。
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