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こんなこともあろうかと!

一昨日、押し花を嗜んでいる同僚と国会前庭洋式庭園に桜を観に行った。

満開なのは楊貴妃と陽光とくらいのところ、
同僚は、花に存分に見惚れた後に、その根元に愛らしい小ぶりの花びらが絨毯のように広がっているのを見て、
「まぁ綺麗」と楽しそうに言って花びらを拾い始めた。

(そういえばたまに花びらが萼に着いたまま落ちていることがある)

思い返して眺めまわすと、あった。
か細い花柄のままのまだ瑞々しい桜の花。
「こんな綺麗な状態のものがありましたよ」と差し出すと
「あら、あら嬉しい」と今度は花を探し始めた。
しかし地に落ちたばかりの花はひどく繊細で、
手のひらに抱いて持ち帰ると温もって萎れてしまうことは、
他でもない私がよく知っていた。

「こんなこともあろうかと! 」

私はポケットからそれを差し出した。

iPod touch出荷時の美しすぎるケース。

「これを用意してきました! 押し花の好きなあなたは屹度花を拾いたくなるだろうと思って! 」

同僚は輝く様な表情になって言った。

「まぁ、なんて気が利くの! 」

それから私は同僚と一緒に花を拾って歩いた。
まるで落穂拾いのように。
花柄のままの桜は思いのほか落ちていて、
手のひらほどのiPod touchのケースはたちまちとりどりの桜で一杯になった。

「ああ、私桜の写真を撮りたいわ。
今度は一眼レフを持ってくるから、ネコタさん、付き合ってくださる? 」

「勿論、ご一緒しましょう」





帰り路、桜の花びらの名残に誘われて
「くずの花の踏みしだかれて色あたらし この山道を行きし人あり という歌がありましたねぇ。ご存知ですか? 」
そんな謎かけをした。
「私その歌知らないわ」
「そうですか」
「誰の歌? 」
「誰でしたかねぇ、旅ばかりしている人だったと思うのですが」
「旅ばかり…一茶? 」
「いやそれは違うでしょう。一茶は俳句ですから。これは五七五七七ですから歌ですよ。
……芭蕉ですかね? 」
「ああ、なんだ、松尾芭蕉かぁ…」

こんな会話を流しながら、私は、彼女に小さな嘘を吐いたことを柔らかく認識していた。

iPod touchのケースは、ほんとうのところ、最近ご尊父を喪くした美しいひとのために、花を持って帰ろうと思って用意したものだった。

でも、押し花を趣味としている同僚が花の傷みに落胆することを思うと、いたたまれなくなって、つい差し出してしまったのだ。

そんなわけで、私は、美しいひとのための野の花と桜とを、痛まないように、茎の末だけを摘まんで隠すように持って帰った。

慰みの花束を作るために。





んでもって。





くずの花のよみ手はふんどしマン(釈迢空)だったことを検索で知る。
そも芭蕉も一茶も俳人ではないか。





かにかくに記憶は粗雑と恥じ入りつ、
同僚に心ばかりに詫び所存。
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ネコタ斑猫

  • Author:ネコタ斑猫
  • オリジナル百物語サイトバー理科室の管理人。本家サイトでは400字×20枚内読み切り短編連載中。死ぬまでに千物語を完成させるのが目標。
    プロフ画像は山田芳裕著「へうげもの」より。古織いいよ古織。
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