私が母乳をひり出すまでの追憶 -粗悪母乳通販の記事に寄せて-

ヒトという種の骨盤が出産に最適化されているわけではないように、乳腺もまた、授乳に最適化されているわけではない。
或いは出産が十代で行われていた頃にはそのようなことはなかったかも知らん。
だが出産が二十代三十代当たり前となった今日、乳腺は、母乳を生産する機能は維持しているものの、詰まっているのが相場である。
先に言っておくが、私はAAAカップの貧相な乳ながら二人の男子を乳離れまで母乳のみで育てきった豪の者である。
だがそこに至るまでには大いなる苦難があった。

まず、
出産したはいいが母乳出やしねぇ。
「吸わせてくださいねー吸わせると子宮が収縮して乳腺を刺激するホルモンが出て母乳が分泌されますのでー」
と助産師さんに言われ、牛乳瓶二本分出血し13時間陣痛と闘った息も絶え絶えな状態でなんとか乳首を含ませようとするが、これがまた先方も生まれたてなもんでへったくそなの。
それでもまぁ乳吸うてくれるわけだな。
んで鳴る程看護師さんの仰るとおり母乳も生産され始めるわけ。

しかーし!

赤子が拙く吸おうとも、そもそも乳腺詰まってて出やしねぇ。

え? 乳腺って詰まるの? そういやぁそんな話妊娠中に聞いたことあるけど、こんな無駄な脂肪を一切装備してない貧相極まりない乳でも詰まるの?


などと自問しようがどうしようが出てこないもんは出てこない。
するとどうなるか。
行き場のない母乳が、乳腺の中に溜まり始めるのである。
これどういう状態か男子にもわかるように説明しますと
ニキビが膿と熱持ってパンパンに腫れた状態
です。

これが両の乳で発生するわけです。

しかもほっとくと乳腺炎になってえらいことになると脅かされるわけです。
んでしぼる。ぎゅうぎゅうと、両の手で、吹き出物の膿を押し出すようにしぼる。もう泣きながらしぼる。
助産師さんも大分しぼってくだすった。
でも出ない。
絞り方に要領を得てないらしい。

したらばうちのオカンが最終兵器出してきた。

「某大学の医学部出身の元お医者さんが、医学生の頃に「これだけは覚えておきなさい! 」って助産師さんに搾乳の仕方を伝授していただいたそうだから、お願いしましょう! 」

(;´゚д゚`)エエ

そら愕然としました。
だってその元お医者さん、すごいおじいちゃん。
引退してるわけだからネー。

しかもその人は母の友人の夫ではあるが、私何も面識ナイヨー。
そんな見知らぬご老人のお宅に上がって乳放り出してその乳をしぼっていただけと!

(; ・`д・´)…

しかしおかんはやり手なので逡巡する隙すら与えてくれません。
すかさずその友人に電話、「こういうのは最後だけど引き受けてくれるって! 」
それで参りました。
ちんまい赤子連れてよろよろしながら。
見知らぬお宅のソファに横になって乳をほりだしお互いなんかこう「すみません」「いえこちらこそ」みたいに目を合わせらんない感じで手業が始まりまして。

しかしやはり昔のお医者さんはスゴイ。

出ましたよ。

数分ほどの施術で。


えー、というわけでですね、己に備わっている機関を活用するという意味合いでは母乳育児は大変結構なのですが、
そんなに自然に出るもんじゃない
ということを皆様に於かれましては認識していただきたい。
んでもって、もしあなたが助産師さん或いは産婦人科のお医者さんで、母乳育児を推奨するのなら、
その手業の体得または技術継承を積極的に行っていただきたい。

何度も言います。
母乳は自然に出るもんじゃないんです。
初産だと、母乳が生産されても出口がふさがってることがままあり、その出口を開く術がない限り、無闇に母乳を生産しちゃうと、乳腺炎という、炎症、発熱、化膿、果ては腫瘍の発生というおっかない病気を誘発してしまうんです。


なんていうか、うまくいえませんが、
母乳もあるけどミルクもねッ!
みたいな軽い気持ちで居たほうがいいですよ。色々。

そして、あのお医者さんに搾乳技術を継承してくだすった見知らぬ助産師さん。
あなたは私の恩人です。
ほんとうにありがとうございました。

あ、あと冒頭に完全母乳と書きましたが、うちの子が全くミルクを受け付けやがらなかったために否応なしにそうなりまして。
それはそれで赤子から3時間と離れられないという面倒臭さがありました。
あと取り揃えたミルクキットが全部パァになった。結構金かかったのにちくそう。

…なんにしたって育児っつーのは時間泥棒に支配された現代においては難儀なもんなんですよ。
うん。
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  • オリジナル百物語サイトバー理科室の管理人。本家サイトでは400字×20枚内読み切り短編連載中。死ぬまでに千物語を完成させるのが目標。
    プロフ画像は山田芳裕著「へうげもの」より。古織いいよ古織。
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