海図をもらいそびれた僕の話

ああ、僕がゆくのは海図のない海だった。
僕にとっての海図をもっているのはあの人であったのに。
あの人が僕を占有したいと思わなかったのであれば、貞操なぞ斟酌せずともよろしいということだ。
貞操は占有者との契約だもの。
とりあえず僕はあの人に渡すべきものを渡すという責務を果たした。
さてその後は買い手がつかなくなるまで面白い人生を生きたって構やしないだろう。

買い手なぞ、ついたらついたで面白いこともあるが、ほんとうは、ただ、ひっそりと、とてつもなく可愛らしいお嬢さんを横目で眺めて、話しかけられてうろたえて、やはりあなたは女神様だと感嘆し遠くから仰ぎ見ながら、海図を持っている人の保護管轄下に、飲まれないだけの酒を飲んで、やぁお疲れ様と酒場を辞すのが夢であったのになぁ。
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ネコタ斑猫

  • Author:ネコタ斑猫
  • オリジナル百物語サイトバー理科室の管理人。本家サイトでは400字×20枚内読み切り短編連載中。死ぬまでに千物語を完成させるのが目標。
    プロフ画像は山田芳裕著「へうげもの」より。古織いいよ古織。
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