澤乃井 春ノ雪

その酒は、いかにも若くやさしかった。まだあげ初めし前髪の 林檎のもとに見えしとき、と瓶を愛しくなでてしまうほどに。
会員店限定商品と仰々しく銘打たれている澤乃井は純米吟醸春ノ雪ささにごり。無濾過生酒、緑の4合瓶に眞白き澱が沈んでいるという体だ。
やらぬうちからこの美味を確信した。1600円であがなえるであろう喜びの中で最上級を確信した。
だから立春朝搾りをずいぶん遅れてお迎えに行った際にこいつに一目ぼれして次回身請けの約束をしたんである。

結論から言おう。
きわめてまっすぐな、まるで春の草が雪を超えんとしてただひたすらに地上を目すような、伸び上がるような、ただの率直な育ち。
でも若いから微弱な発泡感がある。ほんのり甘くて、雪に負けぬように凛と冴えていて、それでいて大人をくすぐるような発泡感があって。余地なくいかにも若いのに穂先は薄紅を帯びているような、自覚せぬ艶の発露。
たとえばまだおさない天から降ってくる牡丹雪をたわむれに口で迎える遊びをしよう。それがこれだ。実際は埃くさかったりして興ざめになるのがおちだが、これはたぶん、やわらかな春の降り初めを君の妄想のままに再現してくれるだろう。
純米吟醸春ノ雪。蛇の目お猪口をほの白く濁らせて、口中でほろほろと溶けかけて、四季のめぐりを予感させてくれる丁寧に育てられた酒。

こういうことをやらかしてくれる澤乃井酒造、自分はほんとに惚れてます。
そして僕にこういうお酒との出会いを設けてくだる高崎屋本店さん、自分はほんとに感謝してます。

原材料名:米(国産)、米こうじ(国産)精米歩合:麹、掛け共55%
アルコール分 15度以上16度未満


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  • オリジナル百物語サイトバー理科室の管理人。本家サイトでは400字×20枚内読み切り短編連載中。死ぬまでに千物語を完成させるのが目標。
    プロフ画像は山田芳裕著「へうげもの」より。古織いいよ古織。
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