「聲の形」について。

ネットですげー話題の漫画「聲の形」のネタバレありありの感想です。えつらんちゅうい。


表紙のおそろしく愛らしいキャラクター、ファンシーなタイトル文字、丁寧な背景、少しセピアな色味に騙されて買ってはならない。これは現代の怪談である。
キャラクターは大勢出てくるが、誰一人として他のキャラクターと心を重ねている描写がなされない。そんな恐ろしい世界の中で、一人の少年の魂の成長が、丹念に、実に丹念に止められてゆく。
聲により伝えられる「お・・・お前さー、なんでこの学校に来たの・・・? 」「お前さー・・・このままじゃうざがられちゃうよ? 」そして初めて文字によって伝えられる「オンチなんだからうたってるフリしとけよ! 」彼女のことを「調査」するために作品世界の誰よりも彼女を見ていた彼だからこそ出た言葉、そして実のところ作品世界の誰よりも彼女の全存在をすくい上げようとしていたのかもしれない言葉、そしてもしそれらが彼女に伝わっていたら 彼の運命こそが救われていたかもしれない言葉は、伝わらず、伝えられず、或いは悪意のない他者によって殺戮される。
あれほど娘のことを育成するそぶりを見せていた母親が、実のところ彼の最初の疑問通り、ただ、親の都合または我が子は健常者であれぞかしという妄信により聾学校に入れていなかったのだとすれば、それもまた凄まじい怪談的設定であるし、さらにこの単行本の元となった読み切りから連載に至るまでに出版社を躊躇わせるもととなった「障碍を表沙汰にしない」現代日本の社会構造こそが或いは彼のような「恐ろしく無邪気で無知なる好奇心の怪物」を生み出す可能性があるということを示唆することにこの作者の目的があるのだとすれば、この作者は、構成構造造形描写あらゆる意味において、ほんとうに、当代随一の怪談の書き手であると思われる。

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  • オリジナル百物語サイトバー理科室の管理人。本家サイトでは400字×20枚内読み切り短編連載中。死ぬまでに千物語を完成させるのが目標。
    プロフ画像は山田芳裕著「へうげもの」より。古織いいよ古織。
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