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救われたこと。

あれは多分バブルの残照がまだあった頃。
某新聞社が、科学者先生を数人読んでの素人向け講演会を例年開催しておった。
何度目のことだったか、
細菌の研究をなさっておられる方がひとくさりご講演をなさった。
専門的な内容を素人にもわかるように説明して下さる、とても聴きごたえのあるものだった。

そしてその講演会では、質疑応答の時間が設けてあった。
聴衆から回収した質問用紙から適宜質問を選び、最後にまとめて研究者連に答えていただく、という体のものである。

さて、その頃丁度樹木社会学なる本を読んでおり、
植物のケミカルコミュニケーション
なるものの存在に痛く感動していた私は、講演を聞いたことで、
或いは細菌も植物と同じように周囲に化学物質を放出することで互いに情報交換しているのだろうか? 神経系もないのに群体っぽい行動が観察されるのならば、そのメディアとしては物理的な何かよりも化学物質の方が可能性が高いっぽいよなぁ。
などという疑問を抱いた。

丁度いいからプロに聞いたれ! ということで、質問用紙に書きつけて投函。

やがて質疑応答の時間となり、確か件の研究者の三つ目あたりで上記の質問が司会のお姉さんに読み上げられ、質問用紙が手渡された。

やった! ボキの質問選ばれた! 教えて偉い人! とワクワクして解答を待つ私の目の前で
件の研究者さんは、実に不愉快そうに
「こんなものに答える意味はありません」
と言って、質問用紙を投げやったのである。

何故? と思った。

お姉さんも唖然。

「そ、それでは次の質問に移らせていただきます…」

わたわたしながら、それでも司会を続けて居たのをよく覚えている。





あれからおよそ十年以上経って、そう、丁度今日のことだ。

今年の一月発行のナショナルジオグラフィックをいつものようにねちねち読んでおったところ、
パエニスバチルス
という土壌細菌が紹介されておるのを見つけた。
その細菌のコロニーの顕微鏡写真の説明文に曰く

「細菌は、化学信号でコミュニケーションを取りながら、集団で行動できる。」

それを読んだ瞬間、あのときから、あの質疑応答のときから、恰も満々と水を湛えた甕を持ちあぐねるように抱き続けていた、ささやかながら探す宛も見つからないような疑問が、不意打ちのように解けたのだ。

ゴルディアスの結び目が、見ているだけでほどけたような気持ちを味わいながら、私は、当時から予感し続けていたもう一つの疑念にも当たりがついたような気になっていた。

私はあのとき、あの研究者が金脈のように隠していた何かに触れかけてしまったのではないだろうか、と。

尤も、そんなのは憶測にすぎない。

私にとって確かなのは、ただ、届いてから半年ほども遅れてようやく読んだ一冊の科学雑誌が、あのとき自分が投げかけた疑問が的外れなものではなかったと教えてくれたということだけだ。





こういう瞬間、こういう脳髄の快楽、こういう魂の解放を味わうためにも、私は、見聞き知ろうとする努力を止めるまいと思う。

そしてまた、このような快楽は、今もどこかの研究室で寝る間を惜しんで鎬を削っているだろう、他ならぬあのときの研究者のような人々の、濃密な努力の上澄みを押し戴いた結果であることを、夢忘れず感謝し続けようと思う。

何より、この解放が、
「終わりなき探究の旅路」
と題されたナショナルジオグラフィックの125周年特集号に拠ってもたらされたということに、私は、人生における啓示めいた何かを覚えたのである。





というわけで、ナショナルジオグラフィックは読むともれなくお利口さんになれる素晴らしい雑誌です。
特にオススメなのが今年限定(とあるが続くといいなぁ)のシリーズ連載「リスクテイカー」。
ナショジオの精神そのままに、リスクを知りながらも最先端を歩み続けることを止めない人々を紹介しており、おそろしく読み応えがあります。
書店で黄色い枠をみかけたら、是非お手に取ってみてください。

序に言うとナショジオは3年の定期購読がめちゃめちゃお安くなってオススメです。
単品買いだと一冊980円なのに3年だと一冊当たりなんと640円くらい!
この機会に下記リンクから是非定期購読しちゃってください! フハハハハハハッハァー! (←なんかよっぽど嬉しかったらしい)





では、皆様にもよき魂の解放がもたらされますように!



因みに件の記念号はこちら。
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カンドーしました!

ぜんっぜん知らなかったです。
そしてぼニー・バスラ―教授はこのような細胞間コミュニケーションが発見されたのは10年前だとおっしゃった。
この講義が1999年前のものだとして、丁度その直前です。私が件の研究者にリジェクトされたのは。

改めて、彼は或いはこの研究で鎬を削っていたころなのかも知れないなぁ、と思いました。

しかしながら、それよりも面白かったことがあります。
丁度私が読んでおります「新鮮イカ学」に、ダンゴイカ類の発光バクテリアについての記述がありました。
本講義で光るバクテリアの話が出た時「あれかなー」と思ったんですが、
まんまダンゴイカの話ではありませんか!
いらんときに光らないように墨袋で覆っているというのはイカ学知識ですが
死屍累々となる前に放出して自分はお休みするというのはこの講義に拠って得られた知識です。
まさに今読んでいる本の内容との「幸福な結婚」だったので、すごくワクワクしました。
そして、勿論「一定数以上で感染が始まる」の謎、私たちが利用しているホルモンという科学的コミュニケーションのツール、「感染」を抑制する新しい薬剤の可能性についてもです。

最後に、
「え? 英語の講義? 聞けるの? わかるの? どうすんの? 」と思ってびびりまくって視聴が遅くなったのをお許しください。

すごい面白かったです! ご紹介ありがとうございました!

ネコタ斑猫 拝

No title

や、どうもご無沙汰しております。
パエニバチルスの話、興味深いですね。

TEDでボニー・バスラー教授が
「細菌はどうやってコミュニケーションするのか」というテーマで講演しています。
http://www.ted.com/talks/lang/ja/bonnie_bassler_on_how_bacteria_communicate.html

すでにご存知かもしれませんが、興味ありましたら是非。耐性菌とクオラムセンシングの話などわかりやすくて面白いです。20分弱の講演です。

でも、なぜその研究者がそんな態度をとったのか不思議ですね。
化学物質による情報交換という方法に懐疑的だったのでしょうか。
プロフィール

ネコタ斑猫

  • Author:ネコタ斑猫
  • オリジナル百物語サイトバー理科室の管理人。本家サイトでは400字×20枚内読み切り短編連載中。死ぬまでに千物語を完成させるのが目標。
    プロフ画像は山田芳裕著「へうげもの」より。古織いいよ古織。
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