世界で一番優しい菓子の話

年に二度ほど、職場で
「萩の月」
が旅行土産として配られる。

届けてくれるのは同僚のMちゃんだ。

二度目くらいのころ
Mちゃんに
「出身が仙台なのかい? 
それとも仙台に特別な思い入れでもあるのかい? 」
と尋ねたことがある。

「いえ…」

彼女は優しげな顔にいよいよ優しげな笑顔を浮かべ言った。

「親戚の男の子が仙台の病院にいるんです」

なんでも両親をなくした青年が
植物状態で
入院しているとの話だった。

遠方ゆえ、見舞い客も余りなく。

それでMちゃんが
年に二度ほど
お見舞いに行っているのだという。

「看護婦さんが、お見舞いの人がくると
調子いいみたいだっていってくれるんです。
それに…」

様々に思いを巡らせただろう小さな沈黙の後。

「仙台は美味しいものいっぱいあるから
行くの楽しいんですよ! 」

そう言ってMちゃんは晴れ晴れと笑った。

爾来萩の月は、自分にとって世界で一番優しい菓子である。


nni's blogさま、記事の紹介ありがとうございました。
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ネコタ斑猫

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  • オリジナル百物語サイトバー理科室の管理人。本家サイトでは400字×20枚内読み切り短編連載中。死ぬまでに千物語を完成させるのが目標。
    プロフ画像は山田芳裕著「へうげもの」より。古織いいよ古織。
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