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私の気持がお前にわかるか! といわれたらどう答えますか。

相手の立場になって考えることも、相手と同一の気持になることも、ほんとうは誰にできるはずもない。
自分と他者とは、異なる個体だからだ。
同じになぞなれるわけがない。
それでもヒトは集団で生活することを選び、うまくやっていくために、お互いで守ってゆくべき了解事項を洗練させてきた。
動物にも種内で記号としてやりとりされる振る舞いや行動がある。あれが原初だ。
「この振る舞いは降伏と解釈しよう」
「この振る舞いは好意と解釈しよう」
動物において、そういう了解事項は、単純に、
「それをそれと解釈しえた個体同士が性淘汰上有利な位置につき結果子孫を遺しえた」
ということであって、別に個体同士がこれをこうみなそうと話し合って決めたわけではない。
そうして私たちの高度に複雑化された法律などは、そのような了解事項が最も先鋭化されたものだけれども、それにしたってそれをうまく行動内に取り入れることのできる個体の方が競争に勝ち残り子孫を残しやすくなるという原初の一大必定に背くものではけしてない。

私は、子どもの教育の目的は社会化にあると了解している。
古人の言葉を借りると
「七十にして、心の欲するところに従い、矩を越えず。 」
感情や欲求を殺すのではなく、社会における了解事項と己の感情や欲求がおのずと折り合っている状態、それこそが教育と己自身の研鑽との最終目的であり、またそれこそが心の安楽な状態であると考えている。

私は子どもの頃、感情や欲求をむき出しに表出するのは恥ずかしいことだと認識していた。
わりと抑圧的な子どもであったことは認めよう。
だが、それにしたって、やはり、感情や欲求をむき出しにあからさまに表出してそれが当然の権利であると主張する人を見ると、躊躇いと違和感とを覚える。
それは、本来、幼子ですらたしなめられるべき振る舞いではなかったか。

教育現場でも、どこでも、よく使われる、だがどうも腑に落ちない言い回しに
「だれだれさんの気持を大切にしましょう」
というのがある。
この言葉自体はそう悪くはないのかも知らん。確かに多対一で一方的に感情行動を抑圧されている場合は、第三者がそのような言葉で多に相手を大切にすることを喚起することが必要だ。
だが、そのような場合であっても
「気持」
という言葉を持ち出すべきではないんではないか、と正直思う。
気持と言うのは曖昧模糊としたもので、結局のところ、他者がどう思っているかなぞわかるわけがない。
脳内分泌のバランス一つで気持なぞ変わってしまうのだから、何もそんな宛てのないものを頼まずとも、ただ
「だれだれさんを大切にしましょう」
でいいんじゃないかと思うんである。

が、そうはいわれない。

多対一の抑圧の現場で用いられるのは、やっぱり
「だれだれさんの気持を大切にしましょう」
なのだ。

その上、だれだれさんの気持を大切にしましょう、という言葉は、それが出てきたら思考停止しなくてはならない一種錦の御旗のように使われはじめたキライすらある。
何しろ他者と同一の気持になることなぞけしてできないんである。
気持ちはこのようなものであろう、と推察したところで、そんなもんじゃねぇよ、とけっぱくられたらどうしようもない。
お手上げである。
そしてこの曖昧模糊と量りがたい「気持ち」というものが、社会における了解事項に切り込むための伝家の宝刀のように頻繁に持ち出されているのが、畢竟今日の状態なのではないか。

自分の「気持ち」と社会における了解事項とを長い時間かけて折りあわせた結果、多くの同じような立場のひとびとに道を開いた山口県光市母子殺人事件の本村洋さんのような方も居れば、
自分の「気持ち」と社会における了解事項とを折り合わせることを拒んだ結果、多くの同じような立場のひとびとの医療を受ける機会と場とをなくしたひとも居る。

勿論社会における了解事項が不適である場合もある。だからといって「気持ち」を伝家の宝刀のように振りかざし了解事項を切り刻むようなことはすべきではない。長い時間をかけて了解事項そのものの改善をもくろむ、それこそが人としてすべきことだし、実際に本村洋さんはなさったのだ。

尊ぶべきは、社会における了解事項と折り合った形で表出される「気持ち」なのだ。

気持ち優位主義の蔓延する日本は、幼子の社会だ。
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ネコタ斑猫

  • Author:ネコタ斑猫
  • オリジナル百物語サイトバー理科室の管理人。本家サイトでは400字×20枚内読み切り短編連載中。死ぬまでに千物語を完成させるのが目標。
    プロフ画像は山田芳裕著「へうげもの」より。古織いいよ古織。
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