展覧会探訪と作品鑑賞との違い

自分が観に行く展覧会は
個人をテーマにしたもの
個人のコレクションをテーマにしたもの
ひとつのトピックをテーマにしたもの
現代美術総ざらえ(横浜トリエンナーレ的)
で、逆にあんま観に行かないのは、
美術館の名前を冠したもの
である。

一人の芸術家をテーマにしたものというのは非常に見ごたえがある。年代ごとの、さまざまなエピソード、時には芸術家自身の言葉を紹介しながらの展示をたどってゆくと、いやおうなしにその人が、時代、人生、作j品、そして自分自身にどのように向き合ってきたかがわかる。さまざまな美術館から作品を借り出してくる苦労に加え、その作品に影響を及ぼした芸術家の作品まで並べてあったりすると、なんたる贅沢、学芸員さんありがとう、と拝みたくなる。

個人のコレクションというのもまたなかなか侮れないものがある。先日私は青山二郎展を見に行ったが、一人の趣味の鋭い蒐集家のコレクションには鬼気迫るものがあるのだ。作品はすでに蒐集品と化しており、対峙したとき作者の所想よりも蒐集家の取り憑かれたようなものへの執着を強く覚えるのだ。コレクターの蒐集物を見る楽しみというものを、恥ずかしながらはじめて覚えた。

一つのトピックをテーマにしたもの、というので印象に残っているのが、以前鎌倉の美術館で開催されていた「視覚の美術展」だ。トリックアートをテーマにした展覧会で、切り口からして非常に面白かったのだが、これなぞは学芸員さんたちの企画力作品の選定力にかかっている。借り出しの労力は変わらずあろうが、有名作品ばかり並べればよいという話でもなくなるので、作品の選定によっては安い予算でも非常に面白い展覧会になる可能性がある。このあたりメジャーでない俳優を起用して切り口鋭く丹念な脚本で仕上げた良質の低予算映画に似ている。

横浜トリエンナーレのような現代美術そうざらえもまた実に面白い。あらゆる手法を使って鑑賞者をびっくりさせようとしてくるすばらしい空間である。片時も気が抜けない、インタラクティブで動的で外連味があって時に俗悪で悪趣味な現代アートが一堂にそろう夢の国。ディズニーランドなんて屁だ。

自分が特定の美術館から作品を借り出してきたスタイルの展覧会があまり好きではないのは、上記のような特長がないからだ。名を冠した展覧会で人を呼べるほどの美術館となると大体国立かそれに準じる位置である。国立美術館のお仕事はそれぞれの時代それぞれの作風の代表作をきちんと網羅することであるから、非常に高いレベルの作品がそろうけれどもちょっと散漫になりかねない。個人の趣味性というのも後回しになる。そうなると、ごゆいのが好きな自分にはどうも合わないね、そういうのが好きなおばちゃんたちが一杯居て窮屈だし、自分は別のところにゆくよ、となるんである。

展覧会探訪と作品鑑賞とは、似ているけれども違う。
展覧会には作品があるけれどもそこで鑑賞するのは作品ではない。一連の作品を通じて、芸術家の生、蒐集家の鋭い趣味とそれに勝る執着、あるいは企画者の意図、時代の大きなうねりと匂いとを探り覚えているのである。確かに鑑賞しているのは個々の作品だけれども、実際にはその背後にある大きな主題を見上げ、圧倒されながらつかもうとしているのだ。


はてブコメント頂戴したので付記。
「あの人ごみさえなければいいと思うんだ。常設展って好きだし。東京国立博物館ですら初めて常設展を見たときはなんて贅沢な展示が特別展の背後にあったんだって思ったものなあ。 」
人ごみはほんとつらい。北斎展なんて人垣三重になって版画が遠い遠い。正直新聞社はあんまりチケット撒かないで欲しいとすら思う。美術展の入場者が何万人とかえばらなくてもいいと思うんだ。ただで来させといて盛況ですじゃねぇと思うの。おかげでほんとに好きなヒトがゆっくり見られないじゃん。
国博の常設展や横浜美術館の常設展は大変好きなんだけどそれ以上にハイパーにすきなのが美術館じゃないけど国立科学博物館の常設展! あんなに楽しいとこはない。系統樹サイコー! まぁ常設や収蔵品ってのは学芸員の知識の厚みを深めてそれが企画展に生かされるという素敵機能もあるので予算の許す限りどんどん増やしたり痛まない程度に展示替えして欲しいなぁ。え? 鳴り物入りで開館した国立新美術館は所蔵品を持たない美術館だって? どうやって学芸員勉強すんだろーね。
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    プロフ画像は山田芳裕著「へうげもの」より。古織いいよ古織。
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